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「エネルギー問題!」(松井賢一)読書メモ・レビュー



「エネルギー問題!」(松井賢一)

★★★★

[レビュー・考察]
・エネルギー全般について、技術・政策・経済などの面から、客観的に現状を解説する良書。
・幅広く、課題を網羅している。また、各事項の説明の濃淡のバランスがとれている。重要な課題・問題点には相応の文字数で解説されている。
・特に、原発に関心のある人は、読むべきだろう。原発問題だけを見ていても「木を見て森を見ず」になる。本書を読めば、エネルギーの全体の課題を概括的に理解できる。そこから自ずと、その一部として原発のあり方が見えてくる。(特に、反原発派には、エネルギー全体のことを数字で考えずに、気分だけで反原発を訴えている人が多い。せめて本書に書かれてあるような基本を知ったうえで、物を言うべきだろう。)
・再生可能エネルギー(いわゆる自然エネルギー)は、長期的には、研究開発を進めるべきだが、すぐに基幹エネルギーになるものではない、ということを、改めて認識させられる。
・ただし、スマートグリッドに関する記述は貧弱すぎる。将来のことを考えれば、スマートグリッドにはもっと詳細に言及してほしかった。スマートグリッドについては、別の本を併せて読むとよいだろう。
・なお、本書は、東日本大震災・福島の原発事故の発生前に書かれている。そのわりには、原発に関して違和感のある説明もなく、余計なバイアスが無い。

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■ 読書メモ(備忘録・要旨):

Chapter1 石油問題の本質――石油時代終わりの始まり:
1.石油はなくならない:
・確認可採埋蔵量は、増え続けている。理由は、探査・開発技術の進歩、新たな油田の発見。
・いつまでたっても、「あと30年、40年」なのは、埋蔵量/生産量の比が恣意的に変えられるため。
・石油会社にとっては、15年程度が理想。
2.石油価格は乱高下する:
・乱高下の理由は、需要は必ずあるが、供給は独占性が強く、供給量を絞って価格を吊り上げられるため。
・乱高下を防ぐには、先物市場の監視消費国の団結などが有効。
3.低落しはじめた石油の地位:
・石油資源の枯渇よりも、需要側の石油離れが先。電気自動車の影響が大きい。

Chapter 2 息の長い石炭、急成長する天然ガス:
1.息の長い石炭:
・石炭の種類・用途は多様。2000年から2007年にかけてのエネルギー消費量で最も伸びたのは石炭、次が天然ガス。
・中国・インドの消費増が大きいため。
・石炭の欠点は、CO2排出量が大きいが、CCT, CCSにより解決可能。
2.急成長する天然ガス:
・天然ガスの種類:
・構造性ガス(メタンガスのガス田)、随伴ガス(油田副産物)、メタンハイドレート、他。
・ガスの輸送手段は、パイプラインが主流。LNG(液化天然ガス)として運ぶ方法も急拡大した(特にアジア)。
・極東ロシアには、膨大な天然ガス資源がある。日本の消費量100年分近く?
・日本では、全国的なガスパイプラインができなくて、天然ガス消費量が少なかった。今後は増える。

Chapter 3 原子力との共存:
1.核分裂の発見から原爆の製造へ
・核分裂により発生するエネルギー E=mc^2。特殊相対性理論。質量が軽くなり、その分巨大なエネルギーが発生する。
・核融合も、融合前の原子の和より質力が軽くなる分、巨大なエネルギーが発生する。
2.原子力平和利用と核不拡散体制の確立:
・米国では、「軍備管理論」に基づき、国際条約締結等の体制構築を進めた。
・IAEAでは、核の一元管理が必須ではなく、二国間取引も認めている。
・NPT 核不拡散条約は、5か国に有利な不平等条約。
3.原子力発電所の安全確保と原子力発電所事故:
・放射線では、ガンマ線が最も危険とされる。アルファ線、ベータ線は体内被曝があれば危険性がある。
・臨床症状が現れないのは、250ミリシーベルト以下。
・ICRP勧告では、医師・放射線技術者等は、蓄積を考慮すると、5年の平均で年20ミリシーベルト、また1年では50ミリシーベルト以下。
・一般の人は、1ミリシーベルト。
・日本の基準はさらに厳しくされている。
・原子力発電所は、何重にもわたる多重防護構成で、安全性を確保している。
・ただし、リリエンソールは、これが装置を複雑にし、いざというときの誤作動、ミスを起こすため、より単純で効果的な装置が良いと指摘している。
・スリーマイル島の事故は人為ミスが原因。被害は小さかったが、パニック状態になった。
・チェルノブイリの事故は、IAEAは当初、原因は作業員の操作エラーとしていたが、原子炉の設計が原因と訂正した。
4.揺さぶられる核不拡散体制:
・イラク、北朝鮮の核疑惑。(IAEAの査察拒否など)
5.今日の課題:
・国際情勢の課題:
(原子力発電国が増えて、核拡散拡大のい危険視が高まった。アメリカのインドの原子力協定締結(インドはNPT不参加)。国際的な核物質管理等のシステムを作る動きが強まる。核保有国の核廃棄意欲。核テロの脅威が高まる。)
・国内情勢:
(核燃料サイクルは原子力発電に必須だが、日本は遅れている。再処理技術の開発が遅れたから。
反プルトニウムキャンペーンなどが影響。「トイレのないマンション」という批判)

Chapter 4 再生可能エネルギーは補間的役割・省エネルギーの逆説:
1.再生可能エネルギーは補間的役割:
・再生可能エネルギーの源は、太陽。(水力も含めて)
・太陽光発電のコストは下がってきた(蓄電の技術・コストと、インバーターの変革)。
・風力は、変換効率が低く、天候に左右され、場所もとるため国土の狭い国には合わない。
・太陽エネルギーは薄く広くばら撒かれ、エネルギー密度が低い。集めるのが大変。
・天候にも左右される。赤道付近が有利。
・再生可能エネルギーは、コストがまだ高く、世界の人口増加を考えると、基幹エネルギーになる見込みは無い。
2.省エネルギーの逆説:
・「エネルギーの効率が上がれば、需要も上がる。」
・省エネルギーには、5つの側面がある(変換効率向上、技術効率(生産目的)、産業・民生・交通の活動単位当たり消費量、GDP当たり消費量、我慢して使わない)

Chapter 5 地球温暖化問題――政治を利用する科学、科学を利用する政治:
1.政治を利用する科学:
・地球温暖化の説と、寒冷化の説の両方がある。
・政治的課題に引き上げたのは、IPCC初代議長のベルト・ボーリン教授とIPCC第一作業部会初代議長のジョン・ホートン卿。
2.科学を利用する政治:
・IPCCの議論は、アングロサクソンペースで進んだ。
・炭酸ガス主犯説は、客観的な証明ではなく、多数決で決められた。
・温室効果ガスの排出削減量の目標の、基準値設定も、欧州有利なものに。
・京都議定書は、排出権取引が取り込まれ、複雑になったが、使いそうなのは日本くらい?
・米国は、さんざん引っ掻き回したのに、批准せず、離脱した。
・日本は、炭酸ガスを減らすのに、米国の倍のコストがかかる。
3.政治に利用される科学の危険性:
・地球温暖化説は、優生学とルイセンコ学説に通じるものがある。
・データと問題についてのオープンで率直が議論が抑圧されている。

Chapter 6 世界のエネルギーを動かす人々:
1.エネルギー観の変遷:
・石油を大量に使わせよう、原子力発電を広めよう、化石エネルギーの使用をやめさせて地球温暖化を防ごうと望む人達が組織的な活動をして世界のエネルギー世論を誘導していた。
2.エネルギー情報の発信と知的戦略集団:
・IPCC(2500人いる)は、一部の中核メンバー(30人くらい)が影響力の強い専門家だが、そこでも意見は分かれてた。
3.モデルと予測
・モデルは単なる試算の結果なのに、将来必ずこうなると期待されるケースが問題。
・モデルを使って動かす人は、何らかの予見を持ち、それに見合うようなモデルを開発し試算を行っている。
・大型モデルがよりよい情報をもたらすとは限らない。

Chapter 7 人類・文明・エネルギー:
1.七つのエネルギー革命:
・人類には7回のエネルギー革命があった。
1) 火の利用開始。人口増につながった。
2) 農耕・牧畜の開始。技術・都市化が生まれた。
3) 鉄の利用開始。青銅より硬く用途が広く生産量も多い。
4) 火薬の利用開始。最初の人工的なエネルギー。
5) 石炭の利用開始。蒸気機関の実用化に。
6) 石油と電気の利用開始。電力網の普及。
7) 原子力の利用開始。戦争の形式にも影響。
2.技術発展の大きなうねり:
・○○は可能だ、という科学者の意見は、正しいことが多いが、○○は不可能だ、という科学者の予想は、誤りが多い。
・発明・発見には、予期されてたものと、予期されてなかったものがある。
3.人類・文明・エネルギーの歴史が教えること:
・20世紀は、火力発電、自動車など、19世紀に発明・発見された技術で繁栄した。
・21世紀は、量子力学の技術など、20世紀の発明・発見で繁栄する。

Chapter 8 日本のエネルギー政策を振り返る――特徴、成功と失敗:
・ 日本のエネルギー政策の特徴
10年周期で政策の局面が転換している。
1941-51: 占領下の経済復興とエネルギー供給基盤整備。石油普及。
1952-61: 経済自立とエネルギー産業近代化。貿易自由化。
1962-72: 高度成長・総合エネルギー政策。LNG増大。
1973-85: 石油危機と省エネルギー転換。
1986-96: 規制緩和と地球温暖化問題の登場。
1997-07: グローバリゼーションと地球温暖化問題への対応。
・戦後、民営電力体制は GHQが望んだものだった。
・日米構造協議の中で、エネルギーに関しても、規制緩和が求められた。
・電力分野に関しては、独立した規制機関の設置、透明・被差別的な託送サービスの提供、公正な託送料金の設定、自由化の点検スケジュールの設定など。
・背景では、ブッシュ大統領とエンロン社が動いていた。
・電力の自由化:
電力会社は、部分的最小限の自由化を、時間をかけて、発送電分離はしないという条件を示すなどして、時間稼ぎをした。
・ 日本のエネルギー政策の成功と失敗:
石油の安定供給の観点では、外資依存が強く、日本の政策は失敗した。LNGでは、成功している。原子力では、核燃料サイクルの確立の遅れが問題。

Last Chapter エネルギー革命が始まった――日本の長期エネルギー戦略は

・2008年の原油価格高騰で、石油離れが決定的となった。
・原子力ルネッサンス:原発の無い国での原発建設、新型の原子炉など。
・小型原子炉は、2015-2020年頃から世界的なブームとなりうる。
・東芝の4S原子炉に注目。
・ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池車。スマートグリッド。

・政府の「新・国家エネルギー戦略」の問題点:原油価格が高止まりするという前提がおかしい。地球温暖化への積極的な取り組み方針も疑問。

・今後(2008年)からの10年は、石油時代の終わりの始まり。新たな時代を築くパラダイム技術は、100年・200年にわたって世界を変革する。核融合反応にも可能性はある。

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[ 2012/01/06 01:23 ] [読書] 科学技術 | TB (0) | Comment (0)

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Author:管理人 ■民間企業勤務(情報技術系)。米国から帰国後、首都圏在住。 ■趣味:海外旅行、読書(経済・ビジネス書、歴史小説、ミステリー)、スポーツ観戦(野球、サッカー、フィギュアスケート)、マスコミ批判。
―― 書評よりも、自分用のメモ・備忘録に重点を置きます。おすすめできる書籍が中心です。


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