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フィギュアスケートの「世界歴代最高得点」「自己ベスト」は、ルール改正分を換算して比較せよ。

※ 一部、タイトルと本文を修正しました。

フィギュアスケートの報道で、「パーソナルベスト更新」「史上最高得点を更新」のような表現を見ることがあるが、単純に数字を比較するのは、意味がない。毎年ルール・採点基準が変わるからだ。特に女子は、バンクーバー五輪後、大幅にルールが改正され、高得点が出にくくなっている。異なるシーズン間でスコアを比較をする場合、ルール・採点基準の変更分を換算・補正しなければならない。そうしないと、実態と乖離した誤報になる。この問題を検証する。


■ バンクーバー五輪の頃は得点は、今のルールで換算すると、大幅に下がる:

例として、データ上の最高得点(SP,FS,Totalとも)である 2010年バンクーバーオリンピックのキム・ヨナのスコアが、現行ルールで、大幅に下がることを、計算して明らかにする。

SPのスコア補正
2010五輪・女子SPのプロトコルを参照し、キム・ヨナのSPの各要素(elements)の基礎点(Base Value)と GOEが、現行ルールでどう変わるかを示す:

3Lz+3T の基礎点: 10.0 → 10.1 (+0.1)
3Lz+3T のGOE: 2.0 → 1.4 (-0.6)
3F の基礎点: 5.5 → 5.3 (-0.2)
3F のGOE: 1.2 → 0.84 (-0.36)
SpSq4(要素削除): 5.4 → 0 (-5.4)
2A の基礎点: 3.5 → 3.3 (-0.2)
2A のGOE: 1.60 → 0.8 (-0.8)
2A が後半と仮定して基礎点1.1倍: 3.3 → 3.63 (+0.33)
<他の要素の変更は軽微のため省略する>


⇒ ルール変更によるSPでの差分の合計: -7.13
⇒ 五輪のSPのスコア 78.50 - 差分 7.13 = 現行ルール補正SPスコア: 71.37

フリーのスコア補正
2010五輪・女子フリーのプロトコルを参照し、キム・ヨナのフリーの各要素(elements)の基礎点(Base Value)と GOEが、現行ルールでどう変わるかを示す:

3Lz+3T の基礎点: 10.0 → 10.1 (+0.1)
3Lz+3T のGOE: 2.0 → 1.4 (-0.6)
3F の基礎点: 5.5 → 5.3 (-0.2)
3F のGOE: 1.8 → 1.26 (-0.54)
2A+2T+2Lo の基礎点: 6.3 → 6.5 (+0.2)
2A+2T+2Lo のGOE: 1.4 → 0.7 (-0.7)
SpSq4(要素削除): 5.4 → 0 (-5.4)
2A+3T の基礎点: 7.5 → 7.4 (-0.1)
2A+3T のGOE: 2.0 → 1.4 (-0.6)
3S(後半) の基礎点: 4.95 → 4.62 (-0.33)
3S のGOE: 1.4 → 0.98 (-0.42)
3Lz のGOE: 2.0 → 1.4 (-0.6)
2A(3回目)は回数制限違反のため 2Lz(後半)に変換 3.85 → 2.31 (-1.54)
(現ルールでフリーで2Aは2回まで。キムは3Lo跳べないため構成上2回転しか入らない)
2A のGOE: 1.4 → 0.42 (-0.98)
(2Aの当時のGOE幅から上記の2Lzの現GOE幅に変換)
ChSq1(要素追加): 0 → 3.5 (+3.5)
(基礎点 2.1, GOEは、五輪のスパイラルの+2相当=+1.4と仮定)
<他の要素の変更は軽微のため省略する>


⇒ ルール変更によるフリーでの差分の合計: -8.21
⇒ 五輪のフリーのスコア 150.06 - 差分 8.21 = 現行ルール補正FSスコア: 141.85

◆以上から、SP+FSの合計スコアは:
五輪でのスコア: 78.50 + 150.06 = 228.56
ルール改正による補正分: -7.13 - 8.21 = -15.34
⇒ 現行ルールの場合のスコア: 71.37 + 141.85 = 213.22

つまり、女子シングルの世界歴代最高得点とされているスコアは、現行ルール換算で、
SP 71.37点, フリー 141.85点、合計 213.22 点
くらいであると言える。五輪時でのスコア 228.56点より大きく下がることが分かる。

上記の例に限らず、他のトップ選手についても計算すれば分かるが、ルール改正によるスコア減少の要因としては、SPのスパイラル削除と、GOEの幅の30%削減が大きい。

(上記のキム・ヨナの2010五輪のスコアの換算では、あくまで、ルール・採点基準の変更分のみを対象にしている。キム・ヨナの五輪のスコアは、PCSやGOEの加点が大きく、インフレだったと言われているが、ここでは考慮に入れていない。もしインフレ分を考慮に入れれば、もっと低い点になることに留意されたい。)

選手の演技の公正な評価のために:

ただ単に「世界最高得点は○○点」のように報道するのは、選手の演技の正当な評価を妨げることになる。特に、2010年の五輪までに高得点を得た選手は、実態よりも不当に高く評価され、ルール改正後に活躍した選手は、実態よりも低く評価される。全ての選手の名誉のため「世界歴代最高得点は無意味」「比較するならルール改正分の補正をすべき」ということを、多くの人に認識してもらえるよう、フィギュアスケートの専門家や報道機関には、啓蒙活動をしてもらいたいくらいだ。

■ 浅田真央の2013四大陸選手権・SPは、事実上は世界歴代最高得点を更新(当時):

2013年の四大陸選手権で、浅田真央は、SPで2年ぶりにトリプルアクセル(3A)を成功させ、優勝した。このときの浅田真央のSPのスコア 74.49点は、下記の世界歴代最高得点の補正値(後述) 71.37点を大幅に上回っている。つまり、事実上は、女子ショートプログラムの世界歴代最高得点を更新しているのだ。

しかし、マスコミの報道では、事実上の記録更新と言わない。それどころか、浅田真央のルール改正前の自己ベスト 75.84 より低いため、「自己ベストに迫る…」程度の言い方しかされてない。演技の本来の価値が正しく評価されないのは、残念でならない。次の試合、2013世界選手権からは、まともな報道をしてほしい。

(なお、浅田真央が、SPで補正値換算でこれほど高得点が出せたのは、ルール改正によりSPで、2Aの代わりに3Aを跳べるようになったことが大きい。)
参考:2013四大陸選手権・女子SPのプロトコル



(参考)
五輪当時(2009/2010) ⇒ 現在(2012/2013) の、主なルール・採点基準の変更点
(軽微な変更、ジャンプのUR導入など最高得点には影響しない変更は、省略):
(1) GOEの加点・減点幅
・3回転ジャンプ:
{-3.0, -2.0, -1.0, 0, +1.0, +2.0, +3.0}
→ {-2.1, -1.4, -0.7, 0, +0.7, +1.4, +2.1}
・ダブルアクセル:
{-2.5, -1.6, -0.8, 0, +1.0, +2.0, +3.0}
→ {-1.5, -1.0, -0.5, 0, +0.5, +1.0, +1.5}
(ジャンプのGOE幅は約30%減。影響大。)
(2) ジャンプ基礎点見直し
3T: 4.0→ 4.1, 3S: 4.5→ 4.3, 3Lo: 5.0→ 5.1, 3F: 5.5→ 5.3, 3A: 8.2→ 8.5, 2A: 3.5→ 3.3.... など多数
(差分は小さい)
(3) SPでスパイラルが削除:
Level4の場合: 基礎点 3.4 {GOE -3~+3} → 0
(トップ選手の場合、スパイラルで5~6点取ってたのが無くなった。これは大きい。)
(4) FSでスパイラル削除・代わりにコレオシークエンス導入:
Level4の場合: 基礎点 3.4 {GOE -3~+3} → 0
コレオシーケンス:0 → 基礎点 2.0 {GOE -1.5~+2.1}
(トップ選手は、だいたい差引 2点ほど減る)
(5) SPの後半ジャンプは基礎点1.1倍
(微増)
(6) フリーで2Aは2回まで
(キム・ヨナのようにフリーで2Aを3回跳ばざるを得なかった選手は影響あり)

(参考) 国際スケート連盟は「世界記録」を認めていない:


歴代最高得点の類について、ISU(国際スケート連盟)は、"statistics"(統計)という表現で、数値を保存・公開しているが、"record"(記録)としては認めていない。ISU statistics のwebページ の最下段に
"The best results achieved in competitions operating under the ISU Judging System are referred to as “highest scores” and “personal bests”. The ISU does not currently recognize the highest scores as “World records”."
という記述がある。世界記録とは認めていないのだ。毎年ルールが変わるのだから当然だ。むしろ、誤解を防ぐため、ISUは、歴代最高スコアの情報は webから削除すべきである。特に2010五輪までは、得点の出方に問題があったため、上記のようなGOEの係数変更等の大幅なルール改正をしたのだから。


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DVD「浅田真央 20歳になった氷上の妖精」について考察


フィギュアスケート・浅田真央のDVD
「浅田真央 20歳になった氷上の妖精」

が発売されます。もう何年も前から、「浅田真央の名演技を集めたDVDを出せば、売れるはず。ほしいと思うファンも多いはず。どこか、出してくれ・・・」と考えていましたが、ようやく実現するらしい。その内容について・・・・

■ 概要:

・発売元「フジテレビジョン/ポニーキャニオン」。
→ フジテレビで放送した試合や、フジテレビが取材等で持っている映像が中心と思われる。テレビ朝日、NHKも、良い演技の映像は持っているのだが、それも合わせるには、いろいろ調整が難しいのだろう。

・収録時間 156分+特典映像 21分。
→ トータルの長さとしては十分。これで、定価 3,990円(Amazon実勢価格 2,970円)なら、高くはない。

・内容: 全体の約1/3が、試合の演技の映像。他に、プライベート映像・練習風景・幼少期の映像などで構成。
→ 試合の映像がもっと多いほうが良いかも。

・試合の映像:8曲12演目を、実況・解説無しのノーカット・完全版で収録。
→ これは素晴らしい。余計な編集が無いことが重要。

・BD(ブルーレイ)での発売はないのだろうか。地デジで演技を見慣れているファンは、HD画質を望んでいると思うが。また、下記のとおり、収録曲はもっと多いほうがいいので、続編が期待される。

■ 収録演技の詳細について

以下の演技が収録される予定(12演目):
----------
●虹の彼方に 映画「オズの魔法使い」より
・2004年12月25日 全日本フィギュアスケート選手権SP
●バレエ組曲「くるみ割り人形」
・2005年12月25日 全日本フィギュアスケート選手権FS
●チャルダッシュ
・2006年12月29日 全日本フィギュアスケート選手権FS
・2007年3月24日 世界フィギュアスケート選手権FS
●ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー
・2007年12月27日 全日本フィギュアスケート選手権SP
●仮面舞踏会
・2008年12月27日 全日本フィギュアスケート選手権FS
・2009年12月26日 全日本フィギュアスケート選手権SP
・2010年2月23日 バンクーバーオリンピックSP
●前奏曲Op.3-2「鐘」
・2009年12月27日 全日本フィギュアスケート選手権FS
・2010年3月27日 世界フィギュアスケート選手権FS
●タンゴ
・2010年12月25日 全日本フィギュアスケート選手権SP
●愛の夢
・2010年12月26日 全日本フィギュアスケート選手権FS
------

これを見る限り、ポリシーとして、
・フジテレビで放送された試合(全日本選手権、世界選手権)
・ほぼノーミスの演技だった試合
が収録されているようだ。

なお、

2004/2005フリー「風変わりな店」
2005/2006ショート「カルメン」
2006/2007ショート「ノクターン」
2007/2008フリー「幻想即興曲」
2008/2009ショート「月の光」
毎年のエキシビション

は収録されないらしい。しかし、特に、「ノクターン」「幻想即興曲」が無いのは、ちょっとさびしい。フジテレビの映像であれば、ノクターンなら2006の全日本選手権、幻想即興曲は2008の四大陸選手権なら、ノーミスだったので、収録してもよかったと思うのだが・・・。

バンクーバー五輪のフリーや、2008世界選手権フリーも、ミスはあったものの、気迫に満ちた素晴らしい演技だったため、あえて収録してもよかったと思う。
また、エキシビションの演技も、特に、2008/2009のタンゴ、2009/2010のカプリースは、入れてほしかった。

■ おまけ:
2週間遅れの3/30に、韓国キム・ヨナ選手のDVD も、同じ会社から発売される予定。しかし、こちらは、
・収録時間は、たったの 99分間(なのに2枚組)。
・収録演技は、たったの4つ。しかも「※演技は全てダイジェスト版です。」とのこと。編集してしまっては、演技は「作品」として成立しない。何のためにわざわざDVDにして売るのだろうか。ノーカットで見せられる演技が無かったから?
・・・ということで、ご愁傷様です。

浅田真央のDVDは、購入予定です。実際に観てから、またレビューします・・・。
→ Amazonで詳しく見る


「浅田真央 さらなる高みへ」 (吉田順) レビュー/メモ


浅田真央 さらなる高みへ (吉田順)

★★★★★


・浅田真央の誕生から2010年末までの20年間の軌跡を、網羅的に記述したもの。
・本人や関係者への取材、客観的な事実の蓄積を重視し、それらをバランス良く配置・構成することに徹底している。スポーツジャーナリズムは、本来こうあるべき。(一部のスポーツライターは、自分の好き嫌い・価値観を、読者に押しつけようとするが、そんなものは誰も求めていない)

・そのためか、浅田真央に関して、今までメディアに出ることはなく、知られていなかったことも多く書かれている。
・著者は、フィギュアスケートの専門家ではないが、それがかえって、余計な先入観が無くて、良い。
・著者の思い込み・エッセイではなく、他の記事の引用などもない。
・浅田真央本人が、読者第一号として目を通しているため、内容の信頼性も高い。

・2004年の全日本選手権、2005年のGPシリーズ中国・フランス大会、毎年のエキシビションのプログラムに関する記述など、もっと書いてほしいこともあったが・・・。
・他国の某選手との「ライバル対決」は、マスコミが勝手に作った「虚構」。
・競技の周辺環境に関することで、厳しい面もあったはずだが、それにはあえて触れていないと思われる(2009年初頭の頃に、モチベーションが下がった本当の理由など)。
・本書のメイキングブログ(http://gakken.jp/ep-koho/?cat=23)も合わせて読むと良い。

-----
■読書メモ

※以下、おそらく、今まで他のメディアでは、ほとんど書かれていなかった事項
(取材を通じて分かったことだろう):

・母親が真央にフィギュアスケートを習わせたのは、バレエに役立てるため(有名なバレエダンサーが元フィギュア選手だったこともあって)。
・6歳の頃の仙台合宿での真央の様子を、長久保コーチや荒川静香も覚えていた。ジャンプの才能を感じたとか。
・真央と舞が子供のころ、同じ試合に出ることは少なかった。母の配慮から。
・2002年、長野の世界選手権で、真央と母親は、タラソワに会った。その頃から、母親は、将来タラソワをコーチにつけたいと考えていた。
・伊藤みどりのトリプルアクセルの軸の傾きは 75度、真央は 85度。伊藤は、助走の軌道が直線的、真央は半円に近く遠心力を利用する形。
・2004年の、初めてのジュニアGPシリーズは、当初は出る予定が無かったが、姉の浅田舞が足を骨折したため、代わりに出た。そこで快進撃。
・2006年、渡米後のコーチ、アルトゥニアンは、真央はクレバーなので、真央の言うとおりにする、というスタンスだった。
・真央はスケート靴を大事にする。長く使うため、年に2足しか使わない。2006年シーズンは靴を変えるタイミングで苦しんだ。
・2006年の全日本は、小指を骨折し深刻な状況の中で、優勝。それまでで一番うれしかった。
・2006/2007シーズンまで、基本的に衣装は母親がデザインしていた。
・2008四大陸選手権の前、アルトゥニアンは「練習を見てないので責任持てない」として、来なくなった。急きょ、小林れい子氏が、サポートすることになった。
・2008世界選手権の1か月前に、靱帯損傷のけがをした。1週間絶対安静のと言われる中、少しずつできる練習をして、試合に備えた。
・小林れい子は、真央に、公式練習でもジャッジらにアピールするよう助言した。
・2008シーズン前は小塚コーチ(小塚崇彦の父)にスケーティングを見てもらい改善した。タラソワにも「スケーティングが変わったわね」と言われた。
・2009(2010五輪)シーズンまで、真央の靴は、既製品を使っていた。このシーズン前は、10セットほど取り寄せ、ブレード・靴の組み合わせを調整しながら、滑り比べ、小塚コーチと相談して決めた。
・五輪選考がかかる全日本選手権の1か月前、ジャンプが絶不調の中、見かねて、長久保コーチが助言した。「助走スピードが足りない」「腰が早く回り始めている」など。そこから復調できた。
・バンクーバー五輪前にには、岡崎真、河野由美コーチの助言により、トリプルアクセルの回転不足対策。助走の軌道を、より円くすることで回転速度アップ。
・五輪後、母親は、真央のスケートから離れることにした。
・五輪後、スケート靴をオーダーメードに変えた。
・「究極のスケーター」になるのが夢。
-----
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Author:管理人 ■民間企業勤務(情報技術系)。米国から帰国後、首都圏在住。 ■趣味:海外旅行、読書(経済・ビジネス書、歴史小説、ミステリー)、スポーツ観戦(野球、サッカー、フィギュアスケート)、マスコミ批判。
―― 書評よりも、自分用のメモ・備忘録に重点を置きます。おすすめできる書籍が中心です。


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